風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

紫陽花、トマト、教室

小学校の花壇には金盞花と名前をしらない小さな紫色の五弁の花がみっしりと植わっていて、その奥には子どもたちが理科の授業で育てているのであろう朝顔ミニトマトの鉢が綺麗に並んでいる。朝顔の水に落としたような淡い青。トマトのペリドットみたいな黄緑から淡い紅色、朱色と変わっていくグラデーションの清々しさ。

私が子どもの頃、授業で栽培したのはヒヤシンス、じゃがいも、朝顔、チューリップ。じゃがいもは芽と根の生え方を観察するというものだったけれど、水がすぐに腐ったような嫌なにおいを放つのが気に食わなかった。トマトだったら良かったのに。

裏門では桜の樹の下、暗い影の中にわさわさと紫陽花が満開で、この花はやはり曇り空によく似合う。雨がしとしと降っていれば完璧だろうけれど、雨に紫陽花なんてまるで物語めいていてどこか嫌らしい。それでも雨の中の紫陽花はとても美しいことは知っている。

紫陽花だって嫌いだった。と、思い出す。密集したものが苦手で、本当に子どもの私は好きなものよりも嫌いなものが多かった。