風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2022-01-01から1年間の記事一覧

20221110 夜更けの夢

明るく広々とした森にいる。樹々の輪郭は淡く、遥か空を突き刺すように聳え立ち、上の方の枝葉はもはや霞んで見えない。 炎の色や金糸雀色や唐紅に金色。きらきらと落葉が一定の速度でゆっくりと落ち続ける。足元には薄く透けて硝子のような落葉が降り積もる…

月と無花果 四

以前娘に言われたことがある。 「死ぬ時に一人ってのは寂しいのかもしれないけれど、その寂しさを回避するためだけに何十年も我慢したくないんだよね」 辛辣な言葉ではあったけれど、当時離婚したての娘に反論する言葉は浮かぶ訳もなく、まあそうねえ、とお…

202209281632 23℃ 曇り

さて、秋だ。 暑い、だるい、もう嫌だ、と言いながらも「終わった」となると少しばかり寂しいのは私がいい加減な人間だからだ。 ---------------- 持病と季節性アレルギー、そしておそらくはプレ更年期というもののためにここ数週間、 「私は元気だ!」 とい…

202207022116 28℃ 曇り

ディプティックのサン・ジェルマン。数年置いてから馴染む香りってある。 ここのはトワレとパルファムが光と影のようで収集欲をそそられて困る。 香りはいくつあってもそれぞれ物語があるので、本同様に尽きない。 --------------------- 河原枇杷男はどうや…

202205290623 明け方の夢

真っ白な日盛りの中を友人Bと歩いている。漫画の中の真夏のページのように、世界の余白という余白が白く眩しく、輪郭は細く途切れそうに薄い。陽を遮るもののない長い一本道を歩いている。砂を踏むじゃりじゃりという音が二人分。遠く蝉の声が数千匹。陽の光…

202202131110 4℃ 雨

雨は一粒一粒ものがたる、とは山村暮鳥。 まさにその通りだと雨の日に窓際でぼんやりしているとしみじみ思う。 雨音は一粒一粒記憶の音だ。 ーーーーーーーーーー あんまり体が冷えるので、スープが飲みたくなった。 鍋に油をひいて、ニンニクと鷹の爪。 く…

月と無花果 参

隣の庭の山茶花が綺麗に色づいている。年間通して芝はいつでも綺麗に刈りそろえられ、花壇は春夏秋冬季節の花が絶えないように植えられている。丁寧に作られた箱庭みたいなきちんとした庭だ。温子は二階のベランダで洗濯物を干しながらお隣の庭を眺めるのが…