風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Polaroid sea

ユウビン、と、電子鴎が運んできた茶色い小包の中身は、錆びた金属の箱だった。 青と緑の錆びに覆われたその箱の中からは、微かに波の音が聴こえる。キイロは食卓のブランコに腰を下ろし、蓋を開けた。 中にはポラロイドが一枚。美しい青は、水面を写してい…

pastel

散歩中に見つけた路地にはカラフルなシャッターが下りていて、何かの色に似ていると思ったら子どもの頃に持っていたパステルだった。 母親は図面を引く仕事をしていたし、父も図面とは遠くない仕事で趣味では絵を描く人間で、おまけに祖母は油絵を描く人だっ…

昨日の夢「Coca-ColaPanic」

コカ・コーラ工場にピクニックに来ている。 空に浮かぶ入道雲と太陽の光は完璧な夏だ。 工場と言っても建物はない。遥々と草原と丘陵が広がっている。 ピクニックに来た人たちはみな芝生に寝転び、空を眺めている。 その頭上には巨大なロケット型のコカ・コ…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅴ

あとは人から聞いた話だ。叫び声をあげながら祭りの広場に走りこんできた私はわけのわからないことをわめきたて、人魚の広場、エルンスト、セヴン・スノウ・ジャック、ナイフ、そればかり繰り返していたそうだ。まったく記憶に残っていないがね。シェリフが…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅳ

最初は目隠しをしているのかと思った。水色の、赤い星が刺繍された綺麗なリボンで目隠しをしているのかと。しかしそれは良く見れば刺青だ。そうしてそんなイカレタ刺青をしたやつなんてこの世にアイツのほかいないじゃないか。 (老・ストークスは僕らをじろ…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅲ

不意に、背中の後ろ、人魚の像の向こう側。私の座る位置から対面にあたる場所に人の気配が漂った。がちがちに凍る体を軋ませながらそろそろと振り向くと、そこには仕立て屋のエルンストが手持ち無沙汰に立っていた。ただ散歩に出てきたようにも見えるし、誰…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅱ

昼間とは全く違う顔だ。取り込み忘れた洗濯物の白いタオルはなにかの葬列のように不穏だった。何度も後ろを振り返ったよ。すると今度は前の方からひそひそと足音がするようなんだ。でも誰もいない。前にも後ろにも、吸い込まれたらディクレッシェンドのよう…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅰ

老・ストークスがセヴン・スノウ・ジャックを見たのは彼がまだ子どもの頃(燃えるような赤毛、磁器(ビスク)のような滑らかな肌、深く湖水に沈む底の底の深い青色した眸を持つ美しい少年だったのだよ、私はね。と老・ストークスは自慢げに語る)、十歳の誕…

六月朔日 urihari

じりりりりり、と目覚まし時計が鳴る。 こんな音は聴いたことがない、と寝惚ける頭で考えている。ああ、そういえば先週時計を替えたのだった。新しい耳慣れない耳障りな、音。 猫が騒音に抗議するように、にぃん、と不満げに鳴いて布団から飛び出た。テーブ…

banana defender

「りーくんね、ばなな、おいしくないって、いったんだよ」 「えー、そうなの?りーくんバナナ嫌いなんだ?」 「んん、ばなな、おいしーよね」 「おいしいよねえ」 「ばなな、おいしくないっていったら、ばなな、ないちゃうよねー。 ばなな、えんえん、て、か…