風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2010-06-05から1日間の記事一覧

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅴ

あとは人から聞いた話だ。叫び声をあげながら祭りの広場に走りこんできた私はわけのわからないことをわめきたて、人魚の広場、エルンスト、セヴン・スノウ・ジャック、ナイフ、そればかり繰り返していたそうだ。まったく記憶に残っていないがね。シェリフが…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅳ

最初は目隠しをしているのかと思った。水色の、赤い星が刺繍された綺麗なリボンで目隠しをしているのかと。しかしそれは良く見れば刺青だ。そうしてそんなイカレタ刺青をしたやつなんてこの世にアイツのほかいないじゃないか。 (老・ストークスは僕らをじろ…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅲ

不意に、背中の後ろ、人魚の像の向こう側。私の座る位置から対面にあたる場所に人の気配が漂った。がちがちに凍る体を軋ませながらそろそろと振り向くと、そこには仕立て屋のエルンストが手持ち無沙汰に立っていた。ただ散歩に出てきたようにも見えるし、誰…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅱ

昼間とは全く違う顔だ。取り込み忘れた洗濯物の白いタオルはなにかの葬列のように不穏だった。何度も後ろを振り返ったよ。すると今度は前の方からひそひそと足音がするようなんだ。でも誰もいない。前にも後ろにも、吸い込まれたらディクレッシェンドのよう…

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅰ

老・ストークスがセヴン・スノウ・ジャックを見たのは彼がまだ子どもの頃(燃えるような赤毛、磁器(ビスク)のような滑らかな肌、深く湖水に沈む底の底の深い青色した眸を持つ美しい少年だったのだよ、私はね。と老・ストークスは自慢げに語る)、十歳の誕…