風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

Seven Snow Jack「老・ストークスの証言」Ⅰ

老・ストークスがセヴン・スノウ・ジャックを見たのは彼がまだ子どもの頃(燃えるような赤毛、磁器(ビスク)のような滑らかな肌、深く湖水に沈む底の底の深い青色した眸を持つ美しい少年だったのだよ、私はね。と老・ストークスは自慢げに語る)、十歳の誕生日を迎えるふた月前の七月の夜だったという。

老・ストークスは手鼻をかみながらその夜のことを、いつでも上等のチョコレイトを味わうかのようにうっとりと、僕ら子どもたちに話して聞かせてくれる。

あれは七月の、夕暮れを過ぎて、風に夜露の匂いの混じる頃。空の底にはまだ蜂蜜のような金色が一筋だけ残り、天上からは紺青の幕が降りて来る夜の始まり。地表はまだ昼の名残の余熱を残し、それを夜の風と影たちが冷まそうとする時間。

わたしはレビオンの店を出て家に帰る途中だった。

どうして子どもだった私がそんな時間に一人で外を出歩いていたかって?七月の二週目の土曜日と言えばなんだ?

そう、アルビレオの星祭だ。アルビレオの星祭の夜に家でおとなしくしている子どもがいるか?

そういうことだ。

今じゃレビオンの店はくそくだらない参考書や粗雑極まりないノート、暇な上に無駄に小金を持ってる奥様方の好きそうな肉や脂をいっさい使わない料理本(ここで老・ストークスは喉を締め上げるように片手で押さえて「ウェップ」と下品な声を出す。僕らもみんな下品な笑い声で返す)そんなものばかり扱っているけれど、私が子どもの頃はガラス製の立体星図盤や祭用のランタン、トケイガメの完璧な剥製、ナインズのお菓子なんかわんさかと置いていたもんだ。

ああ、そんなため息なんかつくな。その代わりお前たちにもバージェスのアイスクリーム店みたいな素敵な店もあるじゃないか。あそこの店主はちょっとした島くらいの大きさのイギリスカイガンリクガメを飼っているらしいじゃないか。ヴァカンスには海に泳がせて自分はその背中の上でビールをかっくらっているらしいじゃないか?

いや、話がそれたな。

そう、その昔は天下一品、今はくそったれ、な、レビオン商会でランタンを買って広場に出るところだった。ママンが私の分のランタンを買い忘れたんだよ。まあ、それも仕方がない。私には十九人の兄と六人の姉がいたからね。しかしだからって愛されてなかったというわけではないが。

レビオン商会は質のいい店だったけれど、広場から少し離れたFブロックにあるから道は広場のあるAブロックよりも暗く人も少ない。おまけに祭りの夜だ。今夜、広場以外に人気はまったくないときている。早く広場に出たくて私は近道の細い、野良猫と鼠、それから曰くつきの何か、しか通らないような路地裏を足早に歩いた。

見上げれば小さな窓と窓のあいだに張られたロープに取り込み忘れた洗濯物の白い影。四角く切り取られた細く長い紺色の空。ひそひそとした自分の足音。