風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

夜の階段

夜の階段をおりていくと、夢が落ちていたので、ぼくはそのなかからひとつの夢を手にとって、また階段をのぼって部屋にもどってきました。 すると部屋の真ん中にはひとりのこぐまが座っていたのでした。 「こんばんは」 こぐまの目はまるでザリガニの目みたい…

音の匣

砕けてばらばらと散らばる硝子に反射して、月は何百にも割れた。 青白い街灯に背中を押されるようにして、歩く。砕け散った硝子を靴の先で蹴ると、月はちりぢりと夜の闇に消えた。 明るい夜で、風は生温かく春の小川のようにうなじをくすぐる。どこからか電…

終末の幽霊

夜の扉を開けたら、天井に吊るされた星たちがさわさわとさざめく。 冬の匂いと金木犀の金色とともに入り込んだ俺に向けられるバーテンの流し目。それは一瞬の、眼球の不随意運動に過ぎない。視線は俺の頬をつきぬけ、闇を漂う。 夜の底に沈む店内には滲むよ…

十月朔日 ito

金色の明朝体で、KOHAKU、と硝子に書かれたドアを開けると既に私以外の面々は揃っていて、綺麗にメイクアップされた横顔たちがぼんやりと薄暗い照明に浮き上がって見える。 「ヤマネ、こっち」 と、中村が声をかけるのにぎこちなく手を上げて答えた。 陽子が…

十月朔日 tegami

日暮春樹様 朝から栗の鬼皮をむいています。1kg半もあるので明け方から熱湯に浸したとはいえ手が負けそう。 どうして渋皮煮なんて面倒なものを作ろうと思ったのか。いつもはそういう手間を嫌うのに。秋だからかもしれません。裸足の足元はすうすうと冷たい水…

このところの夢の傾向

嫌な夢ばかり見る。 先週見たのは犬が死ぬ夢だった。 長い旅から帰ったら家には飼っている筈もない犬が五匹もいて、熱帯雨林の中に建つバラックのような小屋の中で数ヶ月も置き去りにされた小動物たちはどろどろと朽ちかけてそれでも一匹だけ生きていた。生…