風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

このところの夢の傾向

嫌な夢ばかり見る。

先週見たのは犬が死ぬ夢だった。

長い旅から帰ったら家には飼っている筈もない犬が五匹もいて、熱帯雨林の中に建つバラックのような小屋の中で数ヶ月も置き去りにされた小動物たちはどろどろと朽ちかけてそれでも一匹だけ生きていた。生き残ったのは小さなフレンチブルドッグで、骨の浮き出た前足を見たときに確かに私はこの五匹を飼っていたと気づく。気づいた時にはもう遅い。四つの命はもうなくて、残りの一匹もゾンビのように皮も肉も溶けて半ば骨が見えている。どうしようどうすればとポケットから携帯を取り出して夫に電話をしようとするとその携帯もどろどろと溶け出して為すすべがない。

昨日の夢。

ロシアのトロリーバスに乗っている。まるでむき出しの車体で、容赦なく吹雪が身体に降り積もる。

「ねえ、お子さん大丈夫?」

隣に座る婦人が私の腕の中を覗き込んだ。気がつけばまだ新生児の子どもを抱いている。顔には一面霜の様に雪が満遍なく降り積もり、慌てて雪を掻き払うとプラスチックのように真白い肌が現れる。かすかに眉間に皺を寄せるので生きているのがわかった。摩擦で温めようとごしごしと頬や腕をこする。どうしようどうしよう、どうしてこんなことに、と転がり落ちるような焦燥感の中、自分の鼓動がいやにゆっくりと止まるように打つのに気がつく。

ああ、死ぬのは私の方だ、と安心したところで目が覚めた。

どちらも酷く寝覚めが悪い。まだ子どもが新生児の時にもよくこういう夢を見た。為すすべもなく何かの命が失われそうになる夢。