風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

明け方の夢

夢の中で百日を過ごした。 私には現実だけれどあまりに突飛なので概要だけを記して、記録は他にとる。 まあ概要だけで充分突飛かもしれないけれど。 豪奢なホテル。まわりは海に囲まれる。ホテルの中には公園も森もある。ありとあらゆる人種、種族、生物が横…

カザリちゃん「素敵な日曜日」

マンションの9階のベランダから見下ろす風景はミニチュアのようで美しい、とカザリちゃんは思う。 箱庭。ゴジラくらい巨大化して全部踏み潰してみたい。 キャラメルの箱くらいのビルをエナメルのパンプスで踏み砕いたら、貝殻みたいな音がするかしら。 いや…

カザリちゃん「潮騒」

電車に乗って1時間。海の匂いがする道を歩いて20分。 その建物が見えてくると、カザリちゃんはいつも 「お豆腐みたい」 だと、思うのだった。白く、鋭角な形の、あれは絹ごし豆腐の形。木綿じゃなくて。 建物の名前は「しおさい荘」という。まるで民宿のよう…

カザリちゃん「津黄子さん」

どうしてこんなに愛しいのか。 津黄子さんはカザリちゃんと初めて出会ったときからずっと考えている。 あの子はまるで羽二重餅のようだったっけ。 カザリちゃんが生まれた月には、津黄子さんは日本にいなかったから、二人が初めて顔をあわせたのはカザリちゃ…

カザリちゃん「理科室とすもも」

カザリちゃんは理科室が好きだ。 班毎にわかれるあの黒くてつるりと硬い大きなテーブル。かたかたとすわり心地の悪い、背もたれのない小さな木の椅子。テーブルにいちいち水道がついてるのも素敵。ビーカーや試験管。上皿天秤はひどく脆そうな動き方をする。…

カザリちゃん「俯瞰の王国」

水たまりをのぞきこむと、空と雲としゃがみこむ自分のひざこぞうが見えた。 このなかはまたちがうせかいなのかなあ、と、カザリちゃんは思う。 見上げた空は水たまりに映るそれよりも鮮烈に青い。 あのむこうもまたちがうせかいなのかなあ、と、カザリちゃん…

カザリちゃん「遠足」

きゃあきゃあひらひら、と、女の子の声はいつだってフリルのように可愛らしく煩わしい。 秋の空の下、流れる川はゼリイをくずくずにしたような乱れた光が散らばって、目に痛い。枯葉の匂いはすんすんと鼻の奥に気持ちよい。こんな日に遠足だなんて馬鹿げてる…

カザリちゃん「ドロップス」

放課後の方が朝よりもきれい。だと、カザリちゃんは思う。 下駄箱の隙間から、すこん、と校庭が見抜けるところとか。岩石園の苔が夕日を浴びて茶色くてらてらと光るところとか。 だれもいない、永遠に続くように真っ直ぐ伸びたタイル張りの廊下だとか。 カザ…

夜の広場にて

今宵、白樺のダーエが化石になる。 夜の広場に星が降ると、ダーエの身体は美しく結晶化し、象牙のように硬く滑らかなひとつのオブジェとなった。 シグナルのヨハンは赤と青と琥珀の涙を一粒ずつ光らせる。 「俺は生きたままに化石のようだ」 ダイヤモンドを…

視線

ワニのトラヴィスはおいしそうな子豚を見つけた。子豚の名前はティンキー。子豚のティンキーはチョコレートが大好き。ティンキーはショウウインドウにバレリーナの形したミルクチョコレートを見つけた。バレリーナの形したミルクチョコレートの彼女の名前は…

11/5、ねんこの時にしたおはなし

朔ちゃんとコグマさんはブロックでおふねを作りました。 「じょうずにできたねえ」「ほんものみたいだね」 朔ちゃんとコグマさんは大はしゃぎ。 すると、ぼわわわわん、おふねが本物のおふねになりました。 よいしょ、こらしょ、えんやこら 朔ちゃんとコグマ…

十一月朔日 kotatsuyagura

しょうしょう、と、雨の音で目が覚めた。カーテンを開けても部屋の中は薄暗い。 影絵のような鏡の中に映る私の素顔はお化けのよう。猫はまだ布団からでようとしない。ちらりと捲って丸まる背中に鼻をつけたら温かく、つんとするような獣の匂いがした。猫はぐ…