風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

夜の広場にて


今宵、白樺のダーエが化石になる。

夜の広場に星が降ると、ダーエの身体は美しく結晶化し、象牙のように硬く滑らかなひとつのオブジェとなった。

シグナルのヨハンは赤と青と琥珀の涙を一粒ずつ光らせる。

「俺は生きたままに化石のようだ」

ダイヤモンドを纏った町の広場の樅の木よりも、まるで溶ける寸前の透き通る蝋の様な、輝く骨のような、ダーエのその白く硬い肌は美しく星の光を照り返す。空はいま、紫水晶の色で夜の広場を包む。

白樺のダーエが化石になってから百年の後、シグナルのヨハンの光はぱちり、と切れた。赤も青も琥珀もない。

ヨハンの眸はただの空洞と化した。これはヨハンの死。

町の広場から何人かの人間がやってきて、ヨハンを融かし、固め、鋭く尖る鉄の柵に作り変えてダーエのまわりを囲った。

美しい硝子の赤と青と琥珀は砕かれ、モザイク模様にそのまわりに散りばめられた。

その夜、星が降りてきて、二人に祝福のキスをする。

「日々の暮らし」のmotokicksさんに

「この美しい写真をくださらんかのう」

と、泣いて頼んで頂いた一枚から浮かんだものでした。

motoさんアリガトウ!