風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

視線


ワニのトラヴィスはおいしそうな子豚を見つけた。子豚の名前はティンキー。子豚のティンキーはチョコレートが大好き。ティンキーはショウウインドウにバレリーナの形したミルクチョコレートを見つけた。バレリーナの形したミルクチョコレートの彼女の名前はリタ。リタは自分を生み出したパティシエの左手に恋をしている。かつてパティシエの左手は優しく彼女のかわいらしい爪先をつまんだ。焦がれる彼女のハートは内側からとろけんばかり。そのパティシエの左手の名前はセブン。左手のセブンは右手のロビンといつも喧嘩をしている。彼らが力をあわせるのはお菓子作りの時だけ。パティシエのヨミルはうんざりだ。ヨミルはセブンの抹殺を考えている。俺は右手だけで充分まかり通る天才パティシエだ、とヨミルは勘違いしている。そんな傲慢極まりないヨミルを軽蔑の眼差しで見つめているのは美しい帽子屋のシェリ。水曜の夜、シェリはヨミルと一晩ベッドを共にして翌朝あっさり捨てられた。むしゃくしゃと気分の収まらないシェリは自分の為に美しい帽子を作った。贅を凝らした、美しい、世界に一つだけの帽子。これに合うバッグと靴が必要ね。シェリはヨミルから視線を外してあたりを見回すその中に飛び込んできた美しいクロコダイルワニのトラヴィス