風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

少女は皆、毒を持つ

小学校2年生の時、Sちゃんという女の子が転校してきた。おかっぱで、色白。おでこが広く少し受け口の大人しそうな子。Sちゃんはどうしてだか私を気に入ってくれ、私たちはすぐに仲良しになった。日が経つにつれ、大人しそうな彼女はとてもおしゃべりで世話…

ロロ ♯epilogue

「失礼、お嬢さん」 しわがれた声がロロの頭の上から降ってきた。ぎくりとして振り向くと、そこには黒づくめの老人が立っている。『夜』だ!悪夢が蘇る。暗闇のナイフをそのレインコートの下から取り出すのだろうか。思わず目を瞑る。 しかし、老人はロロの…

ロロ Ⅴ♯returned to the ground

すると、四方八方から黒煙のような分厚い雲が集まり始め、とたんに滝のような大雨が降りだした。乱れ落ちる稲妻。吹き荒ぶ風。『夜』の乗った熱気球は嵐の中を右往左往している。青いガラスの中でゆらゆらと蠢くレモン色とオレンジ色の炎は溶けたキャンディ…

ロロ Ⅳ♯Singin' in the Rain

「あのう、歌を歌って雨が降るなら、足元の、ほらあっち、あのオーロラは何が原因で出ているの?」 ロロのはるか北の方向にある足元を見つめて『夜』はふん、と鼻を鳴らす。 「オーロラはワルキューレの鎧が煌めいているだけだ。やつらの行進は『夜』には関…

ロロ Ⅲ♯Lolo became the Night

その瞬間、ロロは何が起こったのか全く分からなかった。見えたのは身体の周りを取り囲む、悪魔のような黒い渦巻。地鳴りと台風が一時に来たかのような轟音と衝撃。ロロとボルはまるでねじり飴のようにぐるぐるとねじれながら洗濯機の中のシーツのように黒い…

ロロ Ⅱ♯a girl meets a mysterious umbrella

ママ特製のベジタブルサモサを頬張りながら、ロロの偵察は続く。冷たいレモネードを飲んで、ため息をつく。見れば見るほどあのおじいさんはおかしいわ。この陽気にあの格好。いかれてる。そうでなければどうしたって魔法使いかなんかじゃないと辻褄が合わな…

ロロ Ⅰ♯in the Sunday park

空は「ぱりん」と割れそうに青く、風は草花の緑の匂い。ポップコーンのかたまりのような雲が泳いでいる。ロロは夏の始まりが心底好きだ。 「ボル、こんな気持ちの良い朝には、きっと妖精だって薔薇の葉影から落っこちてきちゃうわ」 蜂蜜色のやわらかい頬を…

ロロ ♯prologue

ロロは女の子。あなたよりはずっと年下で、君よりはほんの少し年上。 玉蜀黍のひげみたいなクリームベージュ色のごわごわした髪を、いつもおさげに編んでいる。編み方はフィッシュボーン。「Fish bone」、すなわち「魚の骨」。そのネーミングがロロの気に入…

夏宵夢

ええ、そうなんです。この辺りも昔は草っぱらが多くてね、花火の時なんか大人も子供も空き地に集まってわいわいがやがや。今みたいに若い人たちがわざわざ車で出張ってくるようなこともなくってねえ。わいわいがやがやっつっても、まあ大人しいもんでしたよ…