風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

海辺のヨモギ

なぎさ公園近くに住む老夫婦に飼われている猫のヨモギ。彼女の眸には月が隠れていて、ハッカ飴色した毛並みと髭は夜の風で作られている。ヨモギは毎日古ぼけた黄色いワーゲンのボンネットの上で寝そべっているか、なぎさ公園のすぐ裏手にある砂浜まで散歩を…

ヨモギは夢で月を見る

なぎさ公園近くに住む老夫婦が飼っている猫のヨモギは、いつも深遠な哲学者のような顔でボンネットの上に寝そべっている。 その昔、まだ老夫婦が若夫婦であったころには頻繁に動いていたであろう年代物の黄色いワーゲンの上で寝そべる彼女の視線は、太陽も風…

夢の視野

灰色の空。暗く、渦を巻くように低く垂れこめている雲。落ちてくる雨。 雨の中、私はプールサイドに一人立っている。これは夢だと、頭の片隅に覚醒している自分がいる。夢の中の視野は現実のそれとは比較にならないほど広い。 プールサイドに立ちながら私は…

宇宙に雨は降らない

七夕雨。青く煙る窓の外。町は蚊帳を吊るしたように霧の中にすっぽりと沈み込んでいる。 子供の頃、七夕といえばいつも小さいマンションには不釣り合いなわさわさとした大きな笹を母は買ってきて、金銀五彩の折り紙で絢爛豪華に飾りたて、短冊も書くのは私と…