風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

pastel

散歩中に見つけた路地にはカラフルなシャッターが下りていて、何かの色に似ていると思ったら子どもの頃に持っていたパステルだった。

母親は図面を引く仕事をしていたし、父も図面とは遠くない仕事で趣味では絵を描く人間で、おまけに祖母は油絵を描く人だったから、製図用具や画材には事欠かなかった。

雲形定規やガラス棒、三角スケールやトレーシングペーパーが玩具。中でも母の持っている外国製の四角く細い硬いパステルはお気に入りで、それはもう描くよりも眺める方が多かった。画用紙にパステルを滑らすと、柔らかく湿り気のある滑らかな感触が伝わる。

そのパステルのもつ粉っぽいような淡い色彩に、このシャッターの色は似ている。

母の器用さと父のデッサンの正確さと祖母の色彩センスを、全部受け継いでいればかなり彩り豊かな人生になっただろうけれど、なかなかそう上手くもいかない。