昨日の夢 Jazzy step
ぴかぴかと赤い広いフロア。クラブのようだがDJブースがない。音楽が全体を包み込むように流れ込んでくる。
I氏が踊る。
「ほら、俺たちの頃はジャズのステップ」
ジャズのステップなるものがなんなのかわからないけれど、ああそうだね、ジャズのステップだったね、と私も言う。
懐かしいね、あの頃はずっと夜だったから。
赤いフロアがぐるりと回って夏の道になる。ステップ踏みながらI氏となおも踊る。友人たちがぎゅうぎゅうに乗った汚いトラックが通りかかる。「キラーチューンが落ちてくるぜ」
見上げると青い硝子鉢の底のような空がレコードのようにぐるぐる回転しながらゆっくりと降りてくる。友人たちが騒ぎ出す。レコード千枚かけたみたいな大音量。
目が離せないまま煙草に火を点ける。ほら、ジャズのステップ、忘れてるぜ、とI氏が言う。
「あんたなんでそんなスローなのに踊る時だけちゃんとステップ踏めるんだよ。俺はずっと不思議に思ってんだ」
同じことを昔言われたことがある、と思いながら、目が覚める。
きっとそんなステップ、もう踏めない。
水を飲む。