三日の夢「ファッショに気をつけろ」
保育園の慰労会(現実にはそんなものはない)で居酒屋に行く。
がやがやと賑わしい店内に一人、わたしの丁度斜め右前に座る中年の男はくたびれた風でネクタイはまがっているし、スーツもよれよれで陰鬱な表情をしている。銀フレームの眼鏡はご丁寧に斜めにずれている。
なんだこの場に似つかわしくないすさんだ雰囲気は。
おまけに、その男の前にはチーズを切った後のように汚れた包丁が一本、置いてある。不穏すぎる。
店内のTVが緊急放送に切り替わる。
「昨日未明、樹海より甦ったファシスト党が永田町にてクーデターを起こし、日本は本日零時を持って一党独裁の政治体制となります。繰り返します…」
ああ、そういえば今朝のニュースで樹海がどうの、なんて言っていたっけ、と思い出す。
甦ったムッソリーニからの奇跡のメッセージです、と男性アナウンサーが語ると同時に、不穏すぎるその中年男が万歳三唱しだした。こいつ、ファシストの手先か。
男はチーズまみれの包丁を私たちに突きつけながら、強制労働の場所へと連れ出す。
巨大な歯車やパワーショベルをひたすらかわして前に進むという不毛の強制労働。
頭にきた私たちは巨大なものたちをよけながらひたすらに走りつつ、ムッソリーニ暗殺計画をたてている。