昨日の夢「Sevensnowjack」
怖い夢を見た
保育園のお迎えが遅れて夜になる。
台風前の分厚い灰色の空。不穏な色。雲が渦巻く。雨の音が強くなる。
お迎えは混雑している。知らない子供と知らない親たち。不意に一人の母親が私の目の前20cm程に近づいた。
酷く不安にさせられる距離だ。
水色の布で目隠しをしているのかと思ったらそれはペインティングで、その上には赤い星も描かれている。
「ほら、今夜はセヴンスノウジャックのお祭りだからね」
そう言ってにんまりと笑う。ああ、そうか今日はセヴンスノウジャックのお祭りか、と思った途端に脳裏にウィキペディアのページがはたりとめくれる。視界いっぱいに画面が拡がる。
セヴンスノウジャック…Sevensnowjack
アイルランドの伝説。七月に現れる殺し屋。また、現れる際に半径○○mに雪が降ることからセヴンスノウと呼ばれる。誰彼かまわず狙う通り魔ではなく、悪い人間だけを狙う為英雄視される。
水色のカウボーイハット、目隠しの模様にいれた水色に赤い星柄の刺青、黒いマントに赤いブーツ。青年にも老人にも見える。銀髪。ブルーグレイとシーグリーンのオッドアイ。
凶器はナイフ。死体の傍には常に巨大な雪の結晶が残される。
写真の中のジャックのマントが翻り、はたりとまたページが閉じるように私の視界は薄暗い保育園の玄関に戻る。
音がない。誰もいない。雨の音だけがざあざあしとしとと響く。誰か電気をつけないのだろうか。
長く暗い廊下の遠くに先生らしき女の人の背中が見える。声は届かない。
空から億ものバケツをぶちまけているような土砂降り。雨はどんどんひどくなる。校庭の砂はもうすでに濁流のように流れ出す。
がらがらと硝子戸の開く音がして顔見知りの先生が顔を出す。
いつの間にか子供と手を繋いでいた。
「雨、どんどん酷くなりましたね」
「帰れるかしら」
「パレードの人たちもみんな流されてしまったようだし」
見上げる空はビデオテープの早回しのような雲の流れ。押しつぶされそうに広く大きく低い雲の天井。泥流のような色の空。雲の流れは時に巨大な手の形のようにも、髑髏の形のようにも見え、その異形の連続は禍々しく不穏だ。雲が両手を悶えるように開く形に流れるのを見て怖くなり目をつぶる。
激しい雨の音。帰れる気がしない。びかりびかりと稲光が閃く。
黒い旋風が校庭を横切り、セヴンスノウジャックだ!、と甲高い女の声がする。