風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

俯瞰

二階の部屋から干した布団に両腕と胸を預けて庭を見下ろす。モンドリアンのように分割して右上が駐車場、左上は物置。その下半分が芝生、その下芝生の三分の一程の長方形のスペースに白とグレーの大き目の石が敷き詰められている。芝生の左側の境目にはパンジーの鉢が縦に綺麗に並び、その右手は薄いグレーと濃いグレーの細かい石が敷き詰められている。芝生と細かい石のスペースは丁度同じくらいの広さだ。日の光が眩し過ぎてどれもこれもが私も私もと光り出し、一つ一つの輪郭がくっきりしすぎてまるでミニチュアを見ているような気分になる。芝生の真ん中にはしゃがむ義父の灰色の頭が見える。細かい石のスペースの端っこにはちびを抱いた義妹の茶色い頭が。首をがくりと折って真下を見れば縁側に座る義弟の煙草のけむりが見える。そうして見えないけれど私の足の下、この床の下にはきっと夫が畳に寝転んでいる。

俯瞰する私の視線のはるか上空を風が渡る音がする。

地球を見晴るかす神様の視線と、庭を見下ろす私の視線とは、あの瞬間においてなんの大差もなかった。