風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

ハロー!ベイビーグリーン・地獄の陣痛

しかし地獄は14日の昼前にやってくる。ちびも相当そっからでたかったのか、陣痛は既に10分間隔くらいになっていて、その痛みったらもう想像つかないような代物で。母親が「なんかちょっとおなか痛い…うううっ、てくらいでするっと産まれたわよ」なんていう安産な人だったので、ははん遺伝で案外『するっ』ていくんじゃない?私も、なんて高をくくっていた為、5分だの2,3分間隔になったときには失神するかと思った。てゆうか出来ることなら失神したかった。

人によって痛みの度合いも質も違うのだろうけど、ピーク時、私の場合は「坐骨と恥骨に向けて巨大な鉄のハンマーをがんがん振り下ろされている感じ」で、「その状態のまま酸素の薄い場所でマラソンさせられている感じ」でした。きつかった。なんか骨盤に収まっている内臓ごと思いっきり下にひっぱられているみたい。その状態になってからなかなか子宮口が開かず、十時間ほど。気がつけば夜。もうくたくたで、痛みのないはずの数分間とかもなんだかじくじくとする。

この間、夫も大変で、これはそりゃドラマとかじゃあやらないよね、という陣痛の痛みの乗り越え方を一緒にやってくれた。

陣痛が酷くなってきた時に助産師さんが「旦那さん、奥さんのここにこうやって握りこぶしを押し付けてあげててください」と、言う。

陣痛の時って、おしりのとこをグーで圧迫しててもらうとちょっと楽になるのです。

陣痛来るたびにかがんでグーの手をおしりにあててくれる夫…。未だに「ドラマじゃあんなことしてないじゃないか」と言われる。

しかし圧迫もピーク時にはほとんど効かず、ものすごい痛みに自分でも聞いたことないような叫び声が出てしまう。あまりの雄たけびに隣の部屋で陣痛待ちしていた新人妊婦さんが「陣痛ってそんなに痛いんですか?私大丈夫でしょうか」と不安そうに聞いていたよ、と翌日母に言われた。

その状態のまま羊水ばかりどんどん減ってしまって、先生も少しばかり焦って、子宮口全開になる前に分娩台に。やっといきめる、と思ったのも束の間で、どれだけいきんでも出てこない。今度はちびの頭が骨盤に斜めに引っかかっているらしい。

息も絶え絶え、分娩台に残されたまま先生たちは外へ。その間に父と母と夫には先生から話があったらしく、

「羊水がもう大分減ってしまって、このままだと危ないので帝王切開になります」

と伝えられたそうだ。担当医のヤマシタ先生は本当に優しい良い方だったので、「hakkaさんはここまで本当に頑張ってきました。僕も自然分娩で生ませてあげたいと本心では思っています。もしここで帝王切開になると聞いたら、hakkaさんは心が折れてしまわないかそれが心配なんです。お母さんからも一緒に伝えてあげてもらえますか」と母にお願いしたらしい。いや、本当にいい先生だったと思う。後からそれを聞いて「あー、やっぱりヤマシタ先生ってほんっとにいい先生だー。もう一人産むときも絶対ヤマシタ先生がいいなー」と思ったのだけど、実を言えばその時分娩台の上の私は、

「頼む!これ以上出ないのならばもう切ってくれー!」

と思っていたのでした。ヤマシタ先生ごめん。