風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

土曜の夢 「偽物の太陽のサンプル」

勤めている会社の研究部員から、「本物よりも本物に近い偽物の太陽のサンプルが完成しました」と言われてロビーに下りるとそこはまるで神殿のようだ。

太い円柱の隙間から見えるのは雲が乱れ飛ぶ空で、楕円の形したロビーは擂り鉢状に窪んでいる。

天井からは月や星のサンプルがぶら下がり、すぐ目の前に頭が痛くなるほど眩しい太陽が浮かんでいる。

顔の見えない研究員が

「漸く完成した偽物の太陽のサンプルです。より本物に近づけて作られていますので、人間はこの太陽の光で光合成をすることが出来ます」

と言う。

それはとても便利だ、と思うけれど、人間は光合成をするのだったろうか、と考えている。それにしても眩しすぎるので、目を閉じる。目蓋に光があたり、目蓋の裏側の血管がネオンのように光を含んでそれ自体発光しているようだ。眩しい。「ニンゲンハコウゴウセイヲデキルノデスコノタイヨウノサンプルサエアレバイツマデモドコデデモイキテイクコトガデキマス」研究員の声は次第に機械じみてきて、最後はモールス信号のようになる。