風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

昨日の夢「梟、栗鼠ザル、モモンガではない何か」

黒いケーキを買いに行く。

青い道をまっすぐ行くとモノクロのケーキ屋があって、そこの中は色彩がない。

モノクロのケーキ屋に入ると私もモノクロになる。翳みたいだ。

店内はすっきりと広く四角く、ガラスケースは綺麗に磨かれている。明かり取りの窓が大きく、清潔な感じだ。

奥から男の店員が出てくる。黒いハンチングに白シャツに黒のソムリエエプロン、黒のパンツ、黒の靴。顔は見えない。

ショウケースのケーキも全てモノクロで、その中で一際深く黒い、黒のケーキを指差すと、軽く頷く。

箱を取り出し、男が組み立てると、その中から灰色の梟が飛び立った。

雄雄しく重たげにも見えるその梟は、しかし、ばさりばさりと重力など全くないように軽やかに天井に羽ばたく。

男も私も突如現れた梟を目で追う。

不意に足元をさわさわと何かが触れる感覚がした。目線を下げるとそこにはやはりモノクロの栗鼠ザルがいる。

栗鼠ザルは私の肩に飛び乗り、ガラスケースに飛び移り、男の帽子に飛び乗った。

いつのまにか男の両の手のひらには黒いもさもさとした大きな毬藻のようなものが乗っている。もぞもぞと動くそれを私は触りたくて仕方ない。

「これはあまり色のついた人間に馴れていない」

というようなことを男が言っている。気にせず手を伸ばすと強かに噛まれた。

モモンガのようだがどうも違う。大きな黒い毬藻の中に灰青の小さな顔があって、白い小さな牙と南天のような丸く赤い目玉。なんという動物だろう。

そのうちに不可思議なその生物も私も、お互いに馴れてくる。抱いてみるとわさわさと柔らかく温かだ。色彩のない空間の中、その生物の顔だけが色を放っていて鮮やかだ。

そいつは私の腕の中で安心しきって眠る。梟と栗鼠ザルは黒々とした眸でその様子を離れたところから見つめている。

早くしないと黒いケーキが溶け出して本当の翳になってしまうのだから、早くここから出て行かなければと思うのに、腕の中のそいつを降ろすことが出来ずに困惑している。