風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

祖母のトランプ

祖母はカードゲームが好きで、泊まりに行くといつも決まってトランプや花札の相手をさせられた。そうして夜、私が眠った後は一人でソリティアや占いをやっている。

祖母のトランプはフランス製のものと、スペイン製のものがあって、絵柄もよくある市販のものとは違った。仏製のトランプの箱はきっちりと硬い紙の箱で、引き出しの形になっている。蓋の片側が紺紫の長方形、もう片方が口紅のような朱。二色を取り囲む縁は渋い金色で、今思い出してみてもなかなかにお洒落だ。二色からわかるように、箱には紫と朱、二組のトランプが入っている。くすんだ淡く渋い色合いのクイーンやジャックは、並べて眺めるだけでも満足だった。

スペイン製の方の箱は忘れてしまったけれど、版画のような、切り絵のようなデフォルメされたその図柄はエジプト人で、こちらもまた美しいカードだった。

人形遊びではないけれどカードを並べて、このジャックはあのクイーンのことが好きで、あのクイーンはそっちのキングが好きで、と頭の中だけで遊んでいた。傍から見ればトランプを並べてただぼんやりと座っているおかしな子供だが、その頭の中ではなかなかにどろどろとした愛憎劇が繰り広げられたりしていたものだ。

トランプを見ると、深夜、一人居間で時計やスパイダーをやっていた祖母の姿を思い出す。

祖母も母も私も、我が家の女性は代々夜更かしの気がある。一番きちんと眠っているのが私じゃなかろうか。後の二人は未だに2時3時までぐずぐずと起きている。