風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

昨日の夢 「畳に広がるコルコバードの丘」

小学校の時の同級生タカノくんと正門前で待ち合わせている。校庭は同窓会のようで沢山の人がいる。

門の内側でタカノくんが手持ち無沙汰で立っている。

「久しぶり」「久しぶり」「元気だった?」「そこそこに」

並んで校庭を歩く。スプリンクラーが回る中をフリーマーケットが開かれている。香港の屋台村みたいな騒々しいいい匂いがするテントが密集しているところもある。アセチレンランプが鈴なりにぶら下がる。昼間だというのに校庭の回りは光るビー玉がちりばめられたようなネオン街が連なっている。空は青空。

タカノくんは焼き烏賊を食べていて、私は麦酒片手にうずらの卵のような串揚げを食べている。沢山の人とすれ違いぶつかる。

「タカノのリュック大きいね。人がはいれそう」「だって駆け落ちをするんだから色々なものが必要だろう」

駆け落ちってなんだっけ、と思う。よくみるとタカノくんは誰だか知らない人なのだと気がつく。こんな子同じクラスにいなかった。

フリーマーケットの一角に、色褪せたサーモンピンクの小さな木製の机がぽつりと置かれている。薄べったい引出しをがたりと引き出すと、中にカセットテープが一つ入っていた。白に薄いペパーミントグリーンのシール。

「ああ、ねえ、これだよ。DEPTのテープ。こんなところにあったよ」

と、隣のタカノくんを振り返るとのらちんになっている。顔はわからないけれど、のらちんなのだ。

あたりは青い稲がざわざわとなびく田んぼの風景に切り替わる。フリーマーケットも屋台ももうない。

「じゃあせっかくだからうちでテープを聴こう」

とのらひめが言うので、畦道をてくてくと歩く。青空は田んぼにくっつくほど。風がびゅうびゅう吹いて気持ちがいい。

突然部屋になる。畳の部屋。窓には青空が透けるほど薄い白のカーテン。木製のデスク。白いベッド。

テープはたわんでいて、指でくるくる巻きなおす。

「ちゃんと聴けるかなあ」「大丈夫だよ」

黒いラジカセにセットする。再生ボタンを押す。ゆわああんとたるんだ音がした後にきちんとミュージックが流れる。

「ほらね、大丈夫だったでしょう」とのらちんは笑う。

「これが私の聴いてきた音楽なんだ」と私も笑う。

天井の木目を見上げて視線を下に下げると、壁に黒い綺麗な箱が取り付けられている。

「あれは仏壇なんだよ」と言う。

仏壇にしてはモダンでシャープな作りだ。中にはコルコバードのキリスト像とカラフルな聖母マリアイコン画が入っている。

突然目の前に雲海が広がる。キリストの手のひらから空に落ちて、目が覚める。