4/6「Nの夢」
久しぶりに地震以外の夢を見る。
図書館のような病院。大きな吹き抜けがある。ドーナツ状の建物は上の階は明るい。ラウンジに夥しい数の本棚。
下の階は暗い。暗い階段。市役所の非常階段みたい。Tが言う。
「N、目ぇさめたんやって!」
TとJがいるのだけれど、電車に乗っているみたいに二人の姿は後方に流れていってしまった。
気がつくともう寝台のそばにあるパイプ椅子に座って、Nさんを眺めている。目は閉じられていて、管だらけ。
「Nさん」て言うと、目を開けて「おー、××ちゃん」と笑う。あの日死んだっていうのは全く嘘か夢で、そうだNさんはあれからずっと眠っていて心配していたけれど今日また目覚めることができたんだ、と思っている。彼の出てくる夢はリアルなのだ、いつでも。
植物状態だったんだよ、みんな心配したんだよ、と言うと、嘘だぁ、って笑う。Nさん××ちゃんに子ども生まれたら面倒見るよ、冷蔵庫入れとけばいいんでしょ、なんて言ってたけど眠ってる間にほんとに私は子ども産んだんだよ、面倒見てくれんの?なんていう話。
私の子どもは今この絵本が好きなんだよ、と寝転んだままのNさんに見せてあげる。ポップアップの地球と宇宙のはなしの絵本。
「この地球の顔ひどくない?」「ひっどいな」「しかも名前がアーサなんだよ。アースだけに、っての見え見えだよ」「しかし今の絵本てこんな飛び出してくんのか」
なんて話。けけけけ笑いながら話している。ジャムパンの話も。あの話聞いてから私はジャムパンが苦手なはずなのにどうも好きなような気がして仕方ないんだよ。でもやっぱり食べたら苦手なんだよ。
TもJも下にいたけどどこいったかな。私はNさんの目が覚めたって教えてもらって走ったんだけど二人はどうしたかね。
だって今日はライブじゃない?と言う。
そうか、今日は定例ライブか、と思ったら4号館にいた。暗幕張った暗闇の中にドラムやギターが浮かび上がる。誰バンドだろうね、と言う私の横にNさんはいない。いけない病室に戻らないと、と思うけれどどうやったら戻れるのかがわからない。
春になるとNさんの夢をいつも見る。いつも暫く悲しい。夢であえるのは嬉しいけれど。