風景喫茶

備忘録(風景喫茶より)

昨日の夢「塵の山、色紙、神様」

お葬式の帰り。車二手に分かれて帰る。

先に来たのは黒のサイドカー付きのハーレーで、ささっと母と誰かが乗り込んでしまった。

豪快な音を立てて走り去る。

白玉くらいの雨粒がゆっくりと降る空は灰色と黒で、木立ちはぺらぺらの紙のよう。

次に来たのは赤い糸で縫い取りのある、つぎはぎだらけの黒のワーゲン。

乗り込んだのは私と猫と、運転席にはW家の長男、Yちゃん。

ゴシック様式の美しい館だとか、ライト風の邸宅だとか、要塞のような城だとか、崖のような道だとかを、ぐねぐねと走る。

屋根がないから傘をさしているのだけれど、風が強くて飛ばされそうだ。猫をぎゅうと抱きしめる。

まるでジェットコースターのような坂道に、ひどく傾いた古い家が建っていて、その玄関から伸びた急な階段はゴミだらけで、そのごみ袋に埋もれるように、美しい女の人がマネキンの首を抱えて何かを探している。

「怖いから早く行こう」

と、私は促すのに、Yちゃんは「手を探している。珍しい。あんなに珍しい人は明日のTVニュースに出るかもしれない」と取り合わない。

女は髪を振り乱して、まるで狂った機械のようにゴミを漁っている。その充血した眼。

Yちゃんは既に車から降りてしまい、ゴミを漁りながら玄関に戻る女を追いかけている。

「案外、神というのはあのようなものの内にいるのかもしれない。案外あの女のようなものが神なのかもしれない」

と、Yちゃんが呟いた。

私もゴミ袋をかき分け、追いかける。ゴミ袋は透明で美しく、中には折り紙やら和紙やら、蠟引き紙といったカラフルな紙の屑がかさこそと詰められている。

腕の中で猫が「Yちゃんとあの女の人は婚姻するんだ」と囁いた。

目からうろこが落ちるように、婚姻とはこのようなものなのだ、と気付いた瞬間、ゴミ袋の山を滑り台のように私が落ちて行った。